治療方法を決めるにあたり
膵臓がんの治療は、医師の協力の下で治療方針、治療期間、メリット・デメリットなどの説明を十分にうけ、患者さんが自分の価値観などを考慮し 患者さんが最終的な治療方法を最終的に決定する時代になりつつあります。
また医療の進歩とともに治療方法も多様化してきており、 医師によって治療方法が異なることは珍しくなく、主治医以外の医師の意見を聞くセカンド・オピニオンを求めることが必要な時代になってきました。
難治癌である膵臓がんの場合には医師によって考え方や治療方針が異なることが多くなりますので複数の医師の意見を聞くことはとても大切なことといえます。
【膵臓がん(すい臓癌)の治療−外科手術(膵頭十二指腸切除)】
膵臓の頭部(膵頭部)にがんがある場合に行われる手術です。膵頭部に加えて十二指腸全てと胃や小腸の一部、胆嚢、胆管なども一緒に切除します。十分な膵臓が残りますので、消化液(膵液) とインスリンの産生は維持されます。
【膵臓がん(すい臓癌)の治療−外科手術(膵体尾部切除)】
膵臓の体部(膵体部)や尾部(膵尾部)にがんがある場合に行われる手術です。膵頭部側を残してがんができている膵臓と脾臓を切除します。
【膵臓がん(すい臓癌)の治療−外科手術(膵臓全摘出)】
膵臓のすべてを切除する手術で、膵頭十二指腸切除と膵体尾部切除を一緒に行います。この手術を行った場合には膵液を分泌する機能やインスリンを分泌する機能が失われてしまいますので、その機能を補うために薬を飲んだり注射を打つ必要があります。
【膵臓がん(すい臓癌)の治療−放射線療法】
放射線療法は高エネルギーの放射線を使ってがん細胞を殺す治療方法です。身体の外から放射線を照射する外部照射と、手術中におこなう術中放射線照射があります。
すい臓癌は放射線に対する感受性が低く、根治を期待することは難しくなります。膵臓がんに対して放射線療法を行う場合には痛みを除くことが目的となることが多いようです。
【膵臓がん(すい臓癌)の治療−全身化学療法(抗がん剤)】
膵臓がんが遠隔転移がある場合などは手術はできませんので抗がん剤の治療を行うことがあります。また術後の再発予防を目的として抗がん剤が使われることがあります。
最近ではという抗がん剤が使われることが多くなりましたが痛みをとるというのが目的で、腫瘍縮小効果や延命効果はほとんど望めません。
現在臨床試験(実験)で胃がんに使われる抗がん剤を使う病院もありますが、やはり多くを望むことはできません。
膵臓がんは放射線療法や化学療法が効きにくいがんで、これらの治療でがんが治ることはありません。使用目的としては痛みをとるのが中心になります。膵臓がんは手術以外に確立された治療法がないのが現状です。
放射線療法や抗がん剤を用いた化学療法では白血球減少による免疫力の低下が起こりやすいため体を清潔に保つことが大切ですし、規則正しい生活を送る必要があります。 免疫力を賦活させることが大切です。
また、骨髄損傷による白血球減少、血小板減少、貧血などが起こりやすいため造血機能を強化することも大切になります。
白血病は血液のがんです。血液は赤血球、白血球、血小板の3種類の血球と血漿という液体により成っています。血球は骨の中にある骨髄というところで作られます。骨髄中には造血幹細胞というすべての血球のもとになる細胞があり、この細胞ががん化して無制限に自立性の増殖をする病気が白血病です。
白血病は19世紀の中頃、ウィルヒョウというドイツの病理学者によって見つけられました。この時代には治療法もなく白血病細胞がどんどん増え続けて血液が白くなるためこの名前がつけられました。しかし、白血病は現在では骨髄での造血幹細胞のがんと定義されており、がん細胞の血液中への出現の有無とは関係ありません。早期に診断されると白血球数が正常だったり、あるいはむしろ減少していることもあります。このため白血病の診断は、骨髄に針を刺し、骨髄中の細胞を吸引して検査する骨髄穿刺検査が不可欠です。
白血病細胞が骨髄中で増殖し骨髄を占拠すると、正常な骨髄機能が抑えられ、正常な血液細胞が作られづらくなります。その結果、赤血球減少による貧血症状や、白血球(特に白血球の一種である好中球)減少による発熱・感染様症状、血小板減少による出血症状が現れます。次いで病状が進行すると、脾臓、肝臓およびリンパ節への白血病細胞の浸潤による腫大(腫れ)がみられるようになります。
白血病は病状の経過により大きく急性白血病と慢性白血病に分けられます。未治療であれば、前者は数ヶ月で、後者は数年の経過で死に至ります。前者と後者のがん化の機構は全く違っていて、急性の病気が慢性化するというようなものではありません。急性白血病は血液細胞の分化・成熟のある一定の段階で分化が停止し、それより未分化な芽球(白血病細胞)が単一性の増殖をする白血病です。それに対し慢性白血病は、一応は分化・成熟する能力を保持していて、様々な成熟度の白血球が増殖する白血病です。
また、増加している細胞の種類によっても分類されます。白血球の一種であるリンパ球の特徴を表している白血病細胞が占めていればリンパ性白血病、それ以外は骨髄性白血病と大別されます。前述の経過による分類とあわせて、慢性リンパ性、慢性骨髄性、急性リンパ性、急性骨髄性と分類されるわけです。
さらに急性白血病に対して、FAB分類という分類法が広く用いられ、全部で11型に細分類されています。このような細かな分類がなぜ必要かというと、それぞれの型で症状、経過が違っていて、従って治療法や予後も異なっているからです。特に急性白血病では一刻も早い正確な病型診断、治療が行わなければなりません。
ここでようやく検査の話をいたします。白血病が疑われる患者さんが来院すると、最初に採血をして血球の数を調べる検査をします。白血病であれば何らかの異常値を示します。次にスライドガラス上に血液一滴を薄くのばし血液塗抹標本をつくります。それを染色して細胞を顕微鏡で観察します。急性白血病であれば、数は多かれ少なかれ大抵は芽球(白血病細胞)が出現します。芽球とは顕微鏡下で判読できる血球のうち最も未熟なもので、普通は末梢血には出現しません。熟練したものが観察すると、この時点で白血病の型が推測できることも少なくありません。その他、血液凝固系検査で異常値になる場合もあります。血液化学検査では、LDH(乳酸脱水素酵素)や尿酸の異常高値を示すことがあります
確定診断は前述したように、骨髄穿刺検査を行います。穿刺する場所は一般的には胸骨という胸の真ん中の骨で行いますが、場合によってはお尻にある腸骨からも行われます。骨髄液の採取は、一気に強い引圧をかけて吸引し、採取された骨髄液で直ちに細胞数を調べ、塗抹標本を作製します。染色は種々の染色法を何種類か選択して行い、それぞれを顕微鏡で観察します。従来は以上の形態学的な検査で病型診断をしていましたが、現在は細胞表面抗原検査や染色体・遺伝子検査も欠くことのできない検査となっています。血液細胞の表面には種々の分子が存在し、これらの分子に対する非常に多くの抗体が作られています。これらの抗体を使って知りたい抗原を同定するのが細胞表面抗原検査です。この検査を形態学的な検査と併用するとさらに明確に白血病細胞の細胞系列と分化段階を決定することができます。また、白血病では多くの染色体・遺伝子異常が報告されています。染色体・遺伝子検査により確定診断ができる病型もあります。
私たち臨床検査技師は、顕微鏡下での形態観察はもちろんのこと、最近、研究・開発がすすむ遺伝子検査にも注目してまいりたいと思います。
白血病は、病気の進行の速さと癌化する細胞のタイプによって、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病という4つのグループに大別されます。急性白血病は急速に進行し、慢性白血病はゆっくりと進行します。リンパ球性白血病では、リンパ球やリンパ球をつくる細胞ががん化します。骨髄性白血病では、好中球、好塩基球、好酸球、単球をつくる細胞ががん化します。
多くの白血病に有効な治療法があり、治るものもあります。白血病をコントロールできている状態を寛解といい、白血病細胞が再び現れた状態を再発(または再燃)といいます。再発を起こすと、生活の質が徐々に低下し、治療の効果が期待できなくなることもあります。多少の延命を試みるよりも、安らかな状態を保つことの方が重要になる場合もあります。こうした意思決定には、患者本人と家族が参加すべきです。思いやりのあるケアを行う、症状を緩和する(死と終末期: 痛みを参照)、個人の尊厳を保つなど、できることはたくさんあります。
急性白血病の化学療法
白血病といえば血液のがん(造血細胞の腫瘍)とされ、ほおっておけば必ず数年のうちに死亡します。一般のがんの場合は転移さえなければ、手術で取ってしまえば治すことが出来ますが、白血病の場合は、発病と同時に腫瘍細胞が血流に乗って全身に広がりますので、手術は出来ず、化学療法(抗白血病薬)に頼ることになります。
化学療法の進歩は目覚しく、新しい薬の開発、使用法の工夫、支持療法の進歩などにより、治療成績は非常に向上しました。 この化学療法の理念はといって、すべての白血病細胞を、薬で殺してしまう、というものです。当然、正常の骨髄細胞も大きなダメージを受け、骨髄細胞は非常に少なくなりカラカラの低形成状態になります。その状態を経て、骨髄中に正常の造血細胞が回復してくるのを待ちます。一般に白血病細胞より、正常造血幹細胞の方が回転が速いので、先に正常細胞が回復して、順調に行けば骨髄も血液も正常な血液細胞で満たされた状態になるというわけです。
この状態を完全寛解といいます。一般的な検査では、もはや白血病の所見はどこにも見られません。しかし隠れた白血病細胞がまだ潜んでおり、いつか必ず再発します。これを防ぐために、完全寛解後に地固め療法、強化・維持療法という治療を行ない、残存白血病細胞を完全にゼロにして治癒に導こうという努力をします。
最初に行なう治療、これを寛解導入療法と言って、4種類の薬を組合わせて行ないますが、これは、強力であるため、正常の血液細胞もほとんど無くなってしまいます。そのため、出血、感染、貧血が非常に起こりやすくなります。したがって、これらの合併症による出血死、感染死をいかに防いで、寛解まで持っていくかが、白血病化学療法のもう一つの大きな問題です。このためには、強力な抗生物質療法、あるいは血小板輸血、などのサイトカイン、場合によっては抗凝固薬、また無菌室治療なども行なわれます。 こういった治療を支持療法といい、白血病の化学療法には絶対に欠かせない治療です。
こうした努力の結果、現在日本で最も多い成人急性骨髄性白血病の初回完全寛解率は77%に達しています。完全寛解に達して初めてその後の長期生存から治癒が期待できます。 しかし、いったん再発してしまうと、その後の薬の効きは非常に悪くなり、化学療法での長期生存は望めなくなります。
成人の急性リンパ性白血病は、数は少ないのですが、骨髄性より治療成績は良くありません。しかし、小児ではリンパ性が多く、急性白血病の70〜80%がリンパ性で、治療成績は非常に良く、90%以上の寛解率、多くは化学療法のみで治癒が期待できます。小児非リンパ性白血病でもそれに近い良い成績が得られています。
3 分化誘導療法
白血病治療の進歩の中で、骨髄移植と並んで特筆されるのが分化誘導療法です。を理念として行われてきた急性白血病化学療法の中で、この分化誘導療法はまさに画期的な治療法といえます。
あらゆる血液細胞は、ただ1種類の多能性幹細胞という細胞から作られます。これが、骨髄球系とリンパ球系の幹細胞に分かれ、骨髄球系幹細胞は赤血球系、顆粒球系、単球系、巨核球系の幹細胞に分かれます。
急性骨髄性白血病はこのうち顆粒球系幹細胞の遺伝子異常で生じます。正常な顆粒球系幹細胞はさらに分化して、骨髄芽球、前骨髄球、骨髄球、後骨髄球、単核球と成熟し、この段階で血中に出て、分葉白血球となり、生体防御のための働きをします。
急性骨髄性白血病ではこの分化のいろんな段階で、成熟がストップし、腫瘍化して、その段階での幼弱細胞がそれ以上成熟すること無く増殖しつづけるのです。 どの段階で腫瘍化したかにより、増殖している白血病細胞の種類が異なるので、それらをFAB分類でM0からM3までの4種類に分類しています。このうちのM3に分類されるのが急性前骨髄性白血病です。この病型は急性白血病の中でもっとも症状が激しく、DICといって非常に出血症状が強いのが特徴です。
1988年に中国上海の学者がこのタイプの急性白血病にATRA(オールトランスレチノイン酸)という薬を飲ませたところ、なんと90%以上の完全寛解が得られました。 これは当時の白血病治療の常識から言ってまったく想像もつかない驚くべき成績だったのです。 しかも最も治療を困難にさせているひどい出血症状が、この薬を飲ませると短期間ですーっと良くなってしまいます。しかし、この治療がそれまでの化学療法と決定的に違うのは、骨髄が低形成、つまりからからにならない、白血病細胞も正常細胞も殺さないということです。この薬は、前骨髄球段階でストップした分化、成熟を解除し、ふたたび分化の過程に乗せてやるという働きをします。 それで分化誘導療法と呼ばれるのです。
したがって、化学療法につきものの出血、感染などの重大な合併症がほとんど無く、非常に楽に完全寛解に入ることが出来ます。 しかし、まったく問題が無いわけではありません。白血球が増えすぎたり、再発が早い等のため、必ず他の病型と同じように寛解後療法を行ないます。
このATRAという薬は活性型のビタミンAです。これが、t(15;17)という遺伝子異常の結果作られた、分化を抑える異常蛋白の働きを無くするとされています。
分化誘導療法はこれ以前にもいろいろ試みられたことはありますが、これほどの成績は初めてです。 ただ、現在ではM3の急性前骨髄性白血病以外ではATRAは無効です。
一方、慢性骨髄性白血病の場合は、治療の第一選択は骨髄移植です。しかし、年令とか、ドナーがいなくて、骨髄移植が出来ない場合は、やはり分化誘導療法として、インターフェロンαが用いられるようになりました。 これは、現在行われている化学療法よりも明らかに成績が良く、生存期間も伸びていますが、インターフェロンによる治癒がどのくらい得られるかはまだ明らかではありません。
4 造血幹細胞移植
骨髄移植と言う言葉は良く聞かれると思います。 白血病治療の中で、化学療法と並んで重要な位置を占めているのが骨髄移植です。 1975年に始まった骨髄移植は、現在では世界で年間数万例もの患者に行なわれています。
最近では、骨髄移植の他に、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植が、それぞれその長所を生かして盛んに行なわれるようになりました。
骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の3者は、いずれも健康な人の造血幹細胞(あらゆる血液細胞、赤血球、白血球、リンパ球、血小板などのルーツとなる母細胞群)を患者に移植して、患者の病的な造血幹細胞と置き換えてやるという治療法で、これらをまとめて造血幹細胞移植と呼んでいます。
移植と言っても、臓器移植のように切ったり張ったりするわけではありません。 提供者(ドナー)の骨髄や末梢血あるいは臍帯から採取した、造血幹細胞を豊富に含んだ血液を患者の静脈に点滴で入れるのです。
造血幹細胞移植には、患者自身の造血幹細胞を用いて行なう自家移植と、兄弟あるいはボランティアの造血幹細胞を用いる同種移植とがあります。
どのような病気に対して行なわれるかというと、慢性骨髄性白血病、急性白血病、骨髄異形成症候群、重症再生不良性貧血、重症免疫不全など、多くの病気があります。
しかし誰にでも出来るというわけではありません。 提供者と患者との白血球の組織適合抗原(HLA)が出来るだけ一致していなくてはなりません。 また、原則として50才未満の患者に行われます。
組織適合抗原(HLA)というのは、赤血球の持つABOとかRh型などの血液型抗原とは違い、白血球や、その他身体中の核を有する細胞が持っている抗原です。 造血幹細胞移植や臓器移植では、このHLAの一致が必要で、そうでないと拒絶反応や、後で述べるGVHDと呼ばれる重篤な合併症が生じます。
骨髄移植の実際についてお話します。 まず、患者は全身の消毒をし、薬を飲んだり、吸入したりして、気道内や腸内の細菌もゼロにします。 ほとんど無菌状態にして無菌室に入ります。 無菌室では食事も無菌食で、血管からも栄養点滴をします。 次に、大量の抗がん剤の投与と、全身の放射線照射を行ないます。 つまり、患者の白血病細胞を限りなく完全に殺してしまうのです。 しかし同時に患者の正常の造血機能も限りなく破壊されてしまうために、患者は非常に感染を起こしやすく、出血もしやすく、また免疫機能も落ちてしまいます。
この状態で、提供者の骨髄細胞を患者の血管内に点滴して投与します。 このために、ーからは約1,000mlの骨髄液が、骨盤の骨に数10回も針を刺すことによって採取されます。
血管内に入ったドナーの骨髄細胞は、患者の免疫機能がゼロのために拒絶されません。 細胞は、患者のほとんど空になった骨髄に到達して、そこでほとんど拒絶されることも無く住み着いて、生着し増殖を始めるのです。 白血球の増殖を早めるためにG−CSFというサイトカインの注射をします。 そして順調に行けば約2週間たつと白血球が約1,000/μlくらいまで回復して、患者は無菌室から出ることが出来るようになります。
そしてこの時の患者の血液は、赤血球も白血球もリンパ球もすべてドナーのものと置き換わっています。 従って血液型もドナーと同じになるのです。
しかしこの治療は順調に行くことは少ないのです。 強烈な治療であるためにいくつかの重大な合併症があります。
合併症の第一は感染症です。 白血球はない、免疫能はないという状態ですから、いくら無菌状態にいるからと言っても、あらゆる感染の危険があります。 特にサイトメガロウィルス(CMV)による間質性肺炎は致命的になることが多く、予防のためのグロブリン注射が行われます。
次に避けられない合併症がGVHD(移植片対宿主病)と言われるものです。 ふつうの臓器移植の場合は、患者のリンパ球が移植された臓器を異物とみなして排除しようとする拒絶反応が起こります。 しかし骨髄移植の場合は立場が逆です。 患者にはもう拒絶反応を起こすことの出来るリンパ球は存在しません。 逆に、移植されたドナーのリンパ球が患者自体を異物とみなして攻撃するのです。
これはなぜかと言うと、組織適合抗原(HLA)は兄弟の場合は確率的に4人に1人は一致しますが、まだよくわかっていない他のHLAがあるらしくて、たとえHLAの一致した兄弟の間でさえも、GVHDが起こりうるのです。 まして骨髄バンクからの提供者との間ではHLAの完全一致はなかなか望めません。 しかし、HLAにはいくつかの座と言うのがあり、そのうちのA座、B座、DR座が合致すれば移植は可能とされています。
そして、白血病の場合、HLAが完全に一致して、ほとんどGVHDが起こらなかった場合よりも、多少の不一致のためにある程度のGVHDを起こして、それが回復した場合の方が、白血病の再発が少なく、治る確率が高いことが知られています。 それは、ドナーのリンパ球が、患者の破壊されずに僅かに残っている残存白血病細胞をも攻撃して殺してしまうからです。
GVHDの症状は主に、皮膚、肝臓、腸管の障害です。 発疹、水疱、黄疸、肝機能障害、激しい下痢などです。 また、出血性膀胱炎、肝中心静脈閉塞症なども見られます。 3ヶ月くらいたつと慢性GVHDとして、皮膚の硬貨、口腔内乾燥などを生じます。
これらの感染症、GVHDは時には致命的となります。 その予防、治療をいかに行なうかが、骨髄移植の成否に関わります。 そのためには、各種抗生物質、抗真菌剤、抗サイトメガロウィルスグロブリン、抗ウィルス剤、免疫抑制剤、副腎皮質ステロイドなどが使われます。
骨髄移植がもっとも適応となるのは慢性骨髄性白血病(CML)です。 患者が50才未満で、兄弟にHLAの合致した提供者がいれば、骨髄移植が第一選択です。 これにより60%の治癒が期待できます。
提供者がいなければインターフェロン療法を行ないます。 1年間治療をして一定基準以上の効果が認められたら、インターフェロン治療をそのまま続けます。 無効の場合は、骨髄バンクからの提供者が見つかれば骨髄移植を行ないます。 提供者がいなければ、さらにインターフェロン治療を続けます。
急性白血病の場合は、化学療法が効きやすいタイプ{t(8;21)、t(15;17)、inv(16)などの染色体異常のあるタイプ}は、化学療法のみによって60%近い治癒が期待できますので、原則として、骨髄移植は行ないません。
完全寛解が得られても、今後の薬の効きが良くないと予想される場合は、第1回目の完全寛解の時期に骨髄移植を行ないます。 これによって50〜70%の治癒が期待できます。 骨髄移植は原則として、第1回目の完全寛解の時期に行なわれます。 2回目、3回目の完全寛解期では成功率は次第に落ちます。
骨髄移植によって白血病が100%治るわけでは決してありません。 しかも非常に副作用の強い大変な治療法です。 しかし化学療法とともに、白血病を治癒に導く大きな選択肢であり、骨髄移植のおかげで命を救われた患者さんは数え切れないほど多勢居るのです。
最近の骨髄バンクの広告によると、平成12年8月時点での骨髄バンク登録ボランティアの数は約12万9千人。 30万人の登録者数があれば、現在の骨髄移植待機患者1,762人の90%がその恩恵を受けられるとされます。
骨髄バンクに関心をお持ちの方は、
次に、末梢血幹細胞移植についてお話します。 健康な人にG―CSFというサイトカインを注射すると、血液中の造血幹細胞が非常に増えます。 これを採取して、骨髄移植と同じように患者に移植します。 この方法は骨髄移植よりも簡便で感染などの合併症も少なく、優れた点が多いのです。
現在、自家移植の場合は末梢血幹細胞移植の方が骨髄移植よりも多く行われています。 同種移植他人からの移植)の場合は、健康人にG−CSFを注射しなければいけないと言う問題がありますが、最近、保険医療が認められたため、今後盛んに行なわれるようになると思われます。
臍帯血移植は、へその緒の中の血液を利用するものです。 へその緒の血液には骨髄以上に造血幹細胞が含まれています。 これを集めて移植するのですが、量が少ないので主に小児に対して行われています。
しかし、最近全国9ヶ所に公的臍帯血バンクがスタートしました。これにより成人への適用も可能になります。 もともと捨てられていた臍帯や胎盤の血液ですから、これが有効に利用出来ればの負担なしに出来ると言う大きなメリットがあります。
白血病の過剰リスクは、1945年に広島・長崎で被爆した人々に最も早くから認められた放射線被ばくによる晩発影響の一つです。被爆後50年以上を経過した今、この過剰発生は、放射線の最も明瞭な長期的影響として広く認められています。実際、多くの人々にとって、白血病による死亡は原爆被爆者の苦しみを象徴するものとなっています。
1940年代後半に、臨床医山脇卓壮氏が、自身の医師業務を通じて白血病症例数の増加に初めて気付きました。その観察が基となって、白血病症例と白血病に関連した疾患症例の登録が開始されました。これら被爆者における白血病リスクの増加に関する初期の報告は1950年代前半に発表されました。過去45年間に発表されたABCC−放影研報告書のうち、白血病リスクに関するものは50件以上あります。
被爆者の寿命調査は1950年に開始されたので、原爆被爆者における白血病リスクの定量的記述が行われたのは1950年以降の期間についてです。1990年現在、有意な放射線量 に被ばくした50,113人の寿命調査対象者中、176例の白血病死亡例が確認されています。このうち約90例が放射線被ばくによるものと推定されます。この過剰死亡は被爆後10年ないし15年の間に集中的に発生しました。他のがんとは対照的に、白血病の線量反応関係は非線形で(直線でない)、低線量では、単純な線形線量反応で予測されるよりもリスクは低くなっています。次の表は1990年までの寿命調査集団における白血病死亡リスクを要約したものです。
放射線が原因とされる白血病症例の割合(寄与率)は0.2-0.5 Svの線量範囲でも高くなっています。白血病はまれな疾患であり、寿命調査集団のすべてのがんによる死亡の約4%、およびすべての死亡の1%未満を占めるににすぎませんが、白血病による過剰死亡は、この集団のすべての過剰がん死亡の約20%を占めています。他のがんと非常に対照的に、過剰白血病リスクは被爆者が歳をとるにしたがって減少傾向を示しています。初期に最も高いリスクを示した若年被爆者においてこの減少傾向は最も顕著です。
原爆被爆者における白血病を病型別にみると、急性および慢性の骨髄性白血病や急性リンパ球性白血病に有意な過剰リスクが認められます。現在までのところ、有意な放射線量を受けた被爆者におけるこれらの白血病の約半数が放射線と関連していると考えられています。成人T細胞白血病(長崎では低い頻度で生じているが、広島ではほとんど発生していない)や、慢性リンパ球性白血病(西欧諸国とは極めて対照的に日本では非常にまれ)には有意な過剰リスクは認められません。
平均的な被爆者(平均的な線量約0.2 Svを被ばくした人)の生涯にわたる過剰白血病リスクは 約0.001です。これは被ばくしなかった人の生涯白血病リスクの約1.2倍に当たります。これは比較的低い過剰リスクですが、それが被爆後数年間に集中したので非常に目立ちました。
白血病、白血球の異常増殖
造血幹細胞が成熟して白血球になる前の段階で異常に増殖している状態を白血病という。骨髄中で異常な白血病細胞が増えることによって正常な細胞の造血の場が失われるため、正常な白血球、赤血球、血小板ができなくなる。また、白血病細胞が末梢血中に増加するといろいろな臓器に浸潤し臓器障害を起こすことがある。
白血球は大きく分けて骨髄球系の細胞とリンパ球系の細胞に分類される。骨髄球系の細胞は最終的に主に好中球となって末梢血中を流れる。リンパ球系の細胞は成熟すると末梢血に流れたりリンパ節に移動する。白血病は癌化した細胞の種類によって骨髄性白血病とリンパ性白血病に分類される。また、白血病細胞が成熟した細胞に変化する性質を持っている場合、比較的症状はでにくく、慢性的な経過を取るが、白血病細胞が幹細胞に近い幼弱な細胞のまま増殖している場合には急激な症状を呈することが多く、この違いによって急性型と慢性型に分類される。以下は急性白血病について説明する。
急性白血病の治療
白血病の場合、全身に白血病細胞が流れているため、手術や放射線照射などの方法で治すことは困難であるが、一方で、急性白血病は他のがんと比較して抗癌剤に対する反応が良いことが特徴である。そのため治療は抗癌剤を組み合わせた化学療法が中心となる。治療の最初の目標は骨髄中に占拠している白血病細胞を抗癌剤で減少させ、正常な細胞が増えるための場を取り戻すことにある。うまく治療が効いて白血病細胞が骨髄の中の細胞の5%以下になり、正常な細胞が増えてきた状態を完全寛解状態という。最初の治療は完全寛解を得ることを目指した治療、すなわち寛解導入療法という。(急性前骨髄性白血病の場合は最初は抗癌剤を用いず、分化誘導療法で完全寛解を目指す治療を行う。)
●完全寛解
しかし完全寛解とは完全に治った状態(根治)とは異なる。完全寛解状態でも体内にはかなりの数の白血病細胞が残っているため、ここで治療をやめると確実に再発する。そのため再発率を減少させるために寛解後療法という治療が行われている。通常、さらに数コースの化学療法を追加する。
●化学療法の副作用
化学療法の副作用として抗癌剤共通の副作用である嘔気、脱毛、骨髄抑制はさけられない。骨髄抑制とは、抗癌剤が正常な造血細胞にも障害を与えるために、正常な白血球、赤血球、血小板がさらに減少することをいう。白血球減少中(特に白血球の中の1種類である好中球が減少しているとき)には免疫力が低下するため、細菌や真菌(カビ)あるいはウィルスによる感染に弱くなり、時に致命的な感染症を起こすことがある。赤血球が減少すると酸素を運ぶ力が低下するため、動悸、息切れ、倦怠感などが生じる。血小板が低下すると、出血を起こしやすくなる。とくに頭蓋内、胃腸、肺の出血は命に関わることがある。予防対策として、まず胃腸の中の細菌や真菌も免疫力低下中には害になることがあるので胃腸の中の菌を取り除くための抗生物質を内服する。さらに、好中球が少なくなったときには食事もすべて加熱されたものにして、吸入する菌を少なくするためフィルターの入った送風機を用いる。それでも熱がでた場合には抗生剤を点滴することで治療する。赤血球や血小板の減少に対しては輸血で対応する。
また、抗癌剤自体の胃腸障害やストレスによって胃潰瘍や十二指腸潰瘍を生じやすい状態になるため、胃酸を押さえる薬剤や胃粘膜を保護する薬剤を内服する。また、化学療法によって白血病細胞が急速に壊れるために、細胞からもれでてくる有害物質が大量に体内を循環するため、血液の凝固に異常を来したり、血液が酸性になったり、尿酸が析出して腎臓の障害を起こすことがあるため、それぞれ予防薬が必要である。
以上の副作用の他に抗癌剤それぞれに独特の副作用がある。急性骨髄性白血病の治療においては以下の2つの薬剤がよく用いられる。
●急性骨髄性白血病の寛解後療法について
急性骨髄性白血病において完全寛解になった後にどのような治療を行うのが一番良いかは現時点でははっきりしていない。通常の化学療法を繰り返す方法と以下に示す造血幹細胞移植を併用する方法がある。
造血幹細胞移植
通常の化学療法では十分な効果が得られない場合、大量の抗癌剤を投与し、その副作用である壊滅的な骨髄抑制を造血幹細胞を移植することによってサポートするのが造血幹細胞移植である。大量抗癌剤の副作用、免疫力低下による様々な感染症、他人からの移植では生着した骨髄が患者本人の体を他人と見なすことで攻撃するGVHDなど、多くの合併症があり、その合併症による死亡も自家移植で10%程度、同種移植では10〜30%生じる。造血幹細胞は通常は骨髄の中にあるが、化学療法を行った後の骨髄回復期や造血因子(白血球を増やす薬など)を投与した後には末梢血中にも増えてくることが知られている(末梢血幹細胞)。自分自身の造血幹細胞をあらかじめ採取・凍結保存しておいて用いる場合を自家移植、他人から移植する場合を同種移植と呼ぶ。年齢の上限は目安として、自家移植は65歳程度まで、同種移植は50〜55歳程度まで可能である。
化学療法と骨髄移植の比較
完全寛解になった急性骨髄性白血病の人を全くランダムに移植を行う人、通常の化学療法だけを行う人に分けて治療成績を比較した臨床研究が海外で行われている。それによると、移植を行っても行わなくても生存率に大きな差はないのが現状である。移植を行うことによって再発率は低下するものの移植自体の合併症でなくなる場合もある。また、化学療法だけを行って再発した場合も、その時点で移植をすることである程度の人は救われるため、現時点では全員に移植をすることは勧められない。化学療法だけでは再発の可能性が高いと考えられる人だけに移植を行うのがよいと思われる。
臨床検査所見と診断
貧血と血小板減少はかなりよくみられる(75〜90%)。白血球数は減少することもあれば,正常あるいは増加していることもある。白血球数が著しく減少していなければ,通常血液塗抹標本で芽球が見つかる。通常は血液塗抹標本から診断できるが,常に骨髄検査を行うべきである。ときどき骨髄穿刺による検体が低形成であることもあり,針生検が必要とされる。重症の汎血球減少症の鑑別診断においては,再生不良性貧血,感染性単核球増加症,ビタミンB12欠乏,葉酸欠乏を考慮に入れ
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なくてはならない。
ALLの芽球は組織化学検査,および細胞遺伝学,免疫表現型,分子生物学などの検査によってAMLの芽球と識別すべきである。通常の染色による塗抹標本に加えて,ターミナルトランスフェラーゼ,ミエロペルオキシダーゼ染色,ズダン・ブラックB
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染色,特異的および非特異的エステラーゼ組織化学染色がしばしば有用である。
予後と治療
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ALLとAML両疾患の,特に若年の患者における現実的な目標は治癒である。核型による下位分類は予後を明確にするのに有用である(表138-4参照)。
最初の目標は完全寛解で,異常臨床所見の解消,正常血球数回復,骨髄造血正常,骨髄中芽球5%未満,白血病性クローンの消失である。特異的治療法の継続的改善がなされている(後述「急性リンパ芽球性白血病」と「急性骨髄性白血病」参
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照)。治療計画と臨床状況は複雑に関連しているので,経験のある治療チームが要求される。可能なときはいつでも,特に危険な段階(例,寛解導入)の間は専門の医療センターで患者を治療すべきである。
支持療法:支持療法は,特にAMLの患者に重要であるが,一流の血液バンク,薬剤部,検査室と看護サービスを必要とする。通常血小板減少の結果である出血は,一般的に血小板投与に反応する。貧血(86%未満)は濃厚赤血球輸血で治療する
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が,大量出血による貧血の場合は,全血容量を回復させるために全血輸血が必要である。
好中球の減少した免疫抑制患者では,感染は重症となる。臨床的に感染の証拠がないときでも,細菌性敗血症が起こる可能性があるので,好中球数500/μL未満の患者では,グラム陽性微生物に対する適用を含む広域殺菌性抗生物質療法
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(例,セフタジジム,プリマキシン)を始めるべきである。同様に,好中球減少患者の発熱には,適当な検査と培養を行った後すぐに抗生物質併用療法をするべきである。真菌感染の頻度は増加しており,診断は難しい。抗真菌薬による経験的治療は,抗生物質療法が48〜72時間で効果がみられなかった場合に適応がある。不応性肺炎の患者ではニューモシスチス-カリニやウイルス感染の可能性を疑い,気管支鏡検査や気管支肺胞洗浄によって確認し,適切に治療すべきである。しばし
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ば顆粒球輸血と併用する,トリメトプリム-スルファメトキサゾール(TMP-SMX),アムホテリシン,アシクロビルによる経験的治療がしばしば必要である。顆粒球輸血はグラム陰性敗血症のある好中球減少症の患者に有用だが,予防投与としての効果は立証されていない。薬物誘発性の免疫抑制状態にある患者で日和見感染のリスクを有する場合は,ニューモシスチス-カリニ肺炎を予防するためにTMP-SMXを投与すべきである。
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白血病細胞が急速に破壊される初期治療期の患者における高尿酸血症,高リン酸血症,高カリウム血症は,補液や尿のアルカリ化や電解質モニタリングによく注意することによって予防できる。高尿酸血症は,キサンチンから尿酸への転換を抑制するためにアロプリノール(キサンチン酸化酵素阻害剤)を化学療法開始前に与えることにより,最小限に抑えられる。ALLやAMLの治療の基本的原則は同様だが,薬物投与方法は異なる。
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